第1回:紙とペン、本当に最速?
「システム使うより紙が早い!」ベテラン監督のホンネに迫る。あなたの現場も?アナログ作業の裏に潜む見えない手間とは。
第1回:その「紙とペン」、本当に最速ですか?~ベテラン監督のホンネ~
「システム?いやいや、紙とペンでやった方が早いよ。ウチの現場はそれでずっとやってきてるからね。」
そう話すのは、現場一筋30年のベテラン監督、田中さん(仮名)です。長年の経験に裏打ちされたその言葉には、妙な説得力があります。日々刻々と変化する現場で、膨大な情報を瞬時に把握し、的確な指示を出す。そのためには、使い慣れた「紙とペン」が一番確実だと、田中さんは信じて疑いません。
実際、現場でスマホ片手に写真を撮り、事務所に戻ってからExcelで作っておいた台帳に撮影した写真を貼りつけて写真台帳を作成する。このアナログなフローが、多くの建築現場で今も当たり前のように行われています。確かに、Excelシートに写真を配置し、必要な情報を入力していく。その作業は、慣れてしまえばルーティンワークとして確立されているのかもしれません。急な変更があっても、Excel上で修正したり、データを更新したりすることはできる。デジタルツールのように、フリーズしたり、電源が落ちたりする心配もありません。
しかし、本当に「最速」なのでしょうか?
例えば、田中さんのデスクには、山積みの書類や図面が積み重ねられています。過去のデータを探すのに一苦労したり、複数人で同じ書類を共有する際にコピーが必要になったりすることもしばしば。「あの時のあの写真、どこにいったかな…」と、探し物に貴重な時間を費やしている姿を目にすることもあります。
また、Excelで作られた台帳も、写真の貼り付けや文字入力に手間がかかり、読み間違いや書き写しミスが発生するリスクがゼロではありません。情報が個人の中に留まりやすく、担当者が不在の際に必要な情報を探し出すのに時間がかかる、といった声も耳にします。
目の前の作業に集中し、効率を追求するあまり、無意識のうちに積み重なっていく「見えない手間」や「潜在的なリスク」。紙とペンが持つ「最速」という感覚は、もしかしたら、長年の慣れ親しんだ作業プロセスの中に潜む、本当の効率性を見えにくくしているのかもしれません。
次回は、この「見えない手間」について、もう少し深掘りしてみたいと思います。